便利な日本手話のアプリ、文法書が登場【バイリンガル・バイカルチュラルろう教育センター】

バイリンガル・バイカルチュラルろう教育センター ろう児教育の分野で、次々に斬新な試みを打ち出している「バイリンガル・バイカルチュラルろう教育センター」(略称:BBED)から画期的な「日本手話」の教材がリリースされ、世界中からダウンロードされている。

 この教材は、iPhoneやiPod touch、iPad向けのアプリである「実用日本手話Vol.1」(450円)。BBEDの玉田さとみ事業統括ディレクター(注1)は「これまで日本手話のきちんとした教材がありませんでした。日本手話を見たことがないという方もたくさんいらっしゃるので、身近に見ていただければ...」と語る。
 ろう者が自然に身につける「言語」である「日本手話」は、いわゆる手話通訳などの場面で見られる「日本語対応手話」とは異なっている...という話は、かつて本サイト上でも紹介した。記事中で玉田ディレクターは、その違いを「英語」と「ルー語」に例えていたが、実際、日本語と異なる言語体系をもつ「日本手話」を一般人が身につけるのはとても難しい。また教育現場において、つい最近まで異端視されていたことも大きい。誰もが効率よく日本手話を学べる教材は、「実用日本手話Vol.1」以前には、地球上のどこにも存在しなかったのだ。

「やはり手話は、動画じゃないと学ぶのが難しいんです。いい教材を作りたい...と思っていたところに、ご縁があってシステムウェーブ(注2)の方にお話ししてみたら、『ぜひ作らせてください』とおっしゃっていただいて、共同開発することになりました」
 「石川遼くんが宣伝してる英語教材をヒントに」(玉田さん)開発されたアプリでは「自己紹介」「歯科医院で」の2つの場面が設定される。それぞれ、まず日本手話の画像が流れ、次に対応する文章が日本語・英語の字幕で示される。全体を流して見ることもできるし、一つ一つの質問と答えをピックアップして勉強することも可能。画面では手話で重要な表情や手の動きをもらさず見ることができるし、繰り返しも簡単だ。スマートフォンは、手話を学ぶためのメディアとしてうってつけの存在だった。また設定を切り替えれば英語で見ることもできる。「実用日本手話」は実はトライリンガル教材、というわけだ。

「日本手話を学ぶことができる場所は、全国で10カ所もなく、うち半数は東京です。地方で学びたい、という人は本当に大変なんですよ」(玉田さん)「実用日本手話Vol.1」の登場は、ろう者とスピーディに意思疎通するために日本手話を身につけたい、という人にとって朗報なのだ。「ゆくゆくは、vol.10までリリース予定、現在vol2まで済みです。」
 さらにこの4月、BBEDは日本手話教育にとって画期的な本を出版した。「文法が基礎からわかる日本手話のしくみ(注3)」(大修館書店、1260円)と題されたこの一冊は、手話を体系的に、効率よく学びたいと考える人々にとって欠かせない存在となるだろう。インターネット環境にあれば、パソコンやスマートフォンなどを使って、すぐ動画を参照できる仕組みも用意されており、入門編的な「実用日本手話」と合わせて、日本手話学習の環境は飛躍的に整備されてきたと言える。

 とはいえ、BBEDは行政組織ではなく、民間のNPOである以上、財源には限りがある。「実用日本手話」の教材作成に関しては、広くスポンサーを募集中だ(注4)。「寄付金の額は、10000円、5000円、3000円の3種類。寄付だけでも社会貢献になりますが、さらにアプリの中にお名前を載せて、ご希望のサイトにリンクさせますので、世界中からのアクセスが期待できます。アプリを使ったCMと考えていただければと思います。社会貢献に熱心な企業だとイメージづけられますよね。また『こんな内容を制作してほしい』といったリクエストにもお応えできるでしょう」(玉田さん)
 最新流行の面白アイテムを、手話教育やろう者のためのツールとして使いこなすBBED。底流にあるのは、身近なろう者たちへの愛情と、社会全体への協働の呼びかけだ。これから打ち出してくる二の矢、三の矢を、ワクワクしながら待ち受けていたい。

また震災を受け、全国から被災地に行くボランティアのかた向けに、2分半の短く簡単な日本手話動画を現在配信中。「被災地に行く前に、ぜひ覚えてもらえたらと思います。」(玉田さん)

詳しくは「ボランティアのための日本手話入門

(注1)玉田さとみ事業統括ディレクター...ご自身もろう児の親。ろう児が手話で学ぶことのできる学校「明晴学園」を創立するまでのノンフィクション・ストーリー「小指のおかあさん」(ポプラ社、1365円)を2月に出版した。こちらも必読!
(注2)株式会社システムウェーブ...Webコンサルティングやアプリ開発など。社会貢献にも熱心で、BBEDと関わる以前から手話アプリを手がけていた。
(注3)文法が基礎からわかる日本手話のしくみ...「ネイティブの方々が自然に身につけている、映画の実写のような語りや、3次元の地図を見ているような正確な道案内の説明など、手話ならではの魅力的な表現がどんなしくみになっているのか、どうやったらそれができるようになるのか、そのヒントを少しでも見つけていただけたら」(内容紹介より)
(注4)実用日本手話スポンサー募集...vol.2は7月23日に締め切られたが、今後引き続き募集予定。

(取材日 2011年2月17日 東京品川区)

(2011年8月11日 13:00)
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