離島の課題解決を考える"大学"が開校【しまの大学】

弓削大橋 瀬戸内海に浮かぶ愛媛県の離島、上島町の弓削島における高齢化や耕作放棄地増加などの課題について、島内外の人々が知恵を出しあって解決することを目的としたNPO法人「しまの大学」が今年の4月に開校した。同法人では島民から出された地域課題に対するアイデアを、島内外から広く募集し、"学生"(しまの大学会員)らの投票によって選ばれると、"学部"として採用される。現時点では芳香性の高い植物の葉を栽培して商品を開発する『香りと癒し学部』、食べられる草木や海藻やその調理法などについて学ぶ『摘み菜学部』、島内にある資源や商材を利用した商品の開発などを行う『商品開発学部』などが実際に採用され、月に数回の授業が行われている。

大学と名付けられ同法人。しかしいわゆる学校というよりも、島内外の人々が地域を教材として一緒に研究、チャレンジする場と表現したほうが正確かもしれない。
「地域内だけで問題を解決するには限界がある。だから島内外からもアイデアをいただけるこの"大学"を企画しました。島民からは"船便が減少している"、"医療や介護のサポート体制が不足している"、"雇用先が少ない"、"高齢化が進んでいる"など、様々な課題があがっています」(最高執行用務員・兼頭(かねとう)一司さん)
 しまの大学を企画したのは愛媛県周桑郡丹原町(現西条市)で育ち、東京でのサラリーマン生活の後に家族を連れて弓削島に移住した兼頭さん。「学長」には、兼頭さんの恩師で、経済学者の神野直彦・東京大名誉教授が就任。授業は町営体育館などを使用して行われる。4月24日の開講式には島民のほか、島外の会社員や主婦、高校生ら約50人が参加した。

3つある学部の中でも、ニームやコブミカンなどの芳香性の高い柑橘類の栽培や香りにまつわる商品の開発を「学び」を通じて行なう『香りと癒し学部』は、高齢者の就業機会の増加に繋がるとして期待されている。提案したのは、徳島県上勝町で行われている、高齢者が料理の飾り用の歯を出荷する「葉っぱビジネス」の仕掛け人としても知られる、京都工芸繊維大特任教授の河野武平さん。彼は現在同学部で教授も務めている。
「例えばアロマテラピー、アロマオイルなどのアロマ商材、またはバス、トイレなどの芳香剤、ディフューザーとかそういう消臭効果のある商品。そういったものの原材料植物を栽培するための授業が行われています。この地域の特産としてみかんがありますが、お年寄りには意外と大変なんです。キレイなみかんを作るのには農薬が必要。でも農薬自体は体に負担がかかる。だからと言って有機無農薬にしようかっていうと、それはもっと大変。でも『香りと癒しの学部』で学ぶ植物は手間もかからないものばかりなので、お年寄りでも安定した経済活動が行えるようになると思います」

しまの大学の企画立案者にして"最高執行用務員"という肩書きも持つ兼頭さんは、現在島の特産品販売やカフェの経営などを通じて島おこしに取り組む「株式会社しまの会社」の経営にも携わっている。
「しまの会社は島民の島民による島民のための会社。島民60人ぐらいに出資していただいて、自ら経営に参加してもらっています。収益はただみんなで分配するのではなく、地域の未来のために遣っていきます。国や他の誰かに任せるのではなく、地域の主役である住民自身が、地域の資源を活かしながら、考え、運営していくための会社なんです」
 兼頭さんが「しまの会社」や「しまの大学」を通じて行う活動の目的は、決して弓削島の課題解決だけではない。離島ならではのビジネスモデルを示すことで、全国で同じような課題を抱える島々に、課題解決のモデルを示すことこそが、最終的な目標なのである。

 しまの大学では震災復興のため、義援金の寄付、支援物資の提供、空き家を活用した被災者の受け入れなどを現在行なっている。詳しくはこちらから。

※掲載の写真は、2月の取材時に兼頭さんからお借りしたものです。

(取材日 2011年2月24日 愛媛県上島町)

(2011年8月 1日 11:00)
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