加藤哲夫さんの最新刊、仙台の新出版レーベルから2冊同時リリース【仙台文庫】

加藤哲夫さんの最新刊(仙台文庫) 本サイトでインタビューをご紹介した、市民活動のキーパースンである加藤哲夫せんだい・みやぎNPOセンター代表理事(注1)の最新刊『市民のネットワーキング 市民の仕事術Ⅰ』『市民のマネジメント 市民の仕事術Ⅱ』が、仙台の新しい出版レーベルである「仙台文庫(注2)」から6月30日、2冊同時発売されたので、ここにご紹介する。
 本来は書き下ろしが予定されていたが、現在、加藤さんが闘病中であるため、過去に書いた文章を本としてまとめる形で出版されることになった。
 『市民のネットワーキング』は、NPO専門誌などに執筆された記事を集めたもので、東日本大震災後に行われた最新のインタビュー記事が冒頭に置かれ、「ネットワーキングとボランタリー」「エイズが教えてくれたもの」「ネットワーキングの技術」の3つのパートで各論が展開された後、読み応え十分の上野千鶴子さん(注3)の解説がつく。

 また『市民のマネジメント』は、IIHOE(注4)が発行していた雑誌『NPOマネジメント』に連載されたコラム「蝸牛点睛」をまとめたもの。その時々の話題に即した71本のコラムが「マネジメントとは」「仕事とは」「NPOとは」「NPO支援の仕事とは」「公共とは」「加藤哲夫とは」の6つのテーマに区分されて収められており、実際にNPO関連の現場に関わる人にとって、すぐに役立つ処方箋がギッチリと詰めこまれた一冊だ。
 この春、東大を退職し、NPO法人の理事長となった上野千鶴子さんも、こちらの本から「より多くを学んだ」とのこと。思想と実践のフィードバックを常に繰り返し練り上げた「知恵」を、加藤さんは惜しげもなく我々に示してくれる。6月2日付けの「あとがき」が、読者の胸を打つ。「本書の編集・校正・執筆が、抗がん剤治療の苦しみに耐え、生きる気力をふりしぼるのに効果的であった。今後もいのちある限り、執筆を続けたい」

 2冊とも、NPO業界(嫌なコトバですが)の中にいる人、これからその世界に関わろうとする人はもちろん、学校のPTAや町内会などで「異質」な人たちとの付き合い方に悩む人にもお勧めしたい。もちろん一般社会にも十二分に応用の利く「生活の知恵」がギュッと詰まっている。たとえば『市民のネットワーキング』の冒頭には、こんな一節がある。「...人は普段、他者を意識から排除し、理解可能な範囲で生活しています。そのような環境で、真に『他者』と出会うのは難しいのです。人間は自分と似ているものに囲まれ、城壁をつくる生きものです。意図的に異質なものと出会うことを課さないと、主体は立ち上がらないし社会は変わりません」(「はじめに」)
 意図的に異質なものと出会うことを課す...そんなこと自分には無理だ、と考える人もいるだろう。だが、ネットワーキングとはそういうものだ、と加藤さんは教えてくれる。

 『市民のマネジメント』にはこんな一節がある。「真実の瞬間、とでも言うべき時がある。なにごとかがその人の中で弾け、新しいものの見方が誕生した瞬間であったり、組織の中で新しい価値観が受け入れられた瞬間であったりする」「どんな活動にも、どんな人生にも、このような真実の瞬間が常に潜んでいる。ただ、その兆しは、非常に微細で、ついつい見逃しやすいものだから、フラジャイルな(壊れやすい)ものを見つめ、微かな声を聴く、そんな感性と、それをすくい取って決断する強い意志が必要だろう。否、強い意志というより、いかに深く微かな声を聴くか、壊れやすいものを見つめるか、にかかっているのかもしれない」(真実の瞬間)
 一人でも多くの方に、考えながら行動しながら生きていくためのヒントが溢れ出るこの2冊を手にとっていただきたいと、切に願う。販売部数は900とのことなので、ぜひお早めにご注文を。

(注1)加藤哲夫さん...現在もブログを更新中なので、ぜひご覧戴きたい。
(注2)仙台文庫...2011年1月創刊。2011年7月現在まで4点が刊行されている。「仙台文庫は、商業出版でも自費出版でもない「市民出版」です。今、地域発の出版活動は、収益事業としてはますます困難になっています。 しかしその地域に暮す人々が力を合わせることで、「自分たちがほしい本」を刊行することは可能なのではないでしょうか。」(ウェブサイトより)またこのサイトでは、加藤さんの旧著や加藤さんが主宰していた出版社・カタツムリ社の出版物を入手することも可能だ(2011年7月現在)。
(注3)上野千鶴子さん...解説の原文を、ご本人のブログで読むことができる。また上野さんの東大での最終講義も、理事長を務めるNPO法人ウイメンズ・アクション・ネットワークのサイトで視聴可能。
(注4)IIHOE...人と組織と地球のための国際研究所。IIHOEでもこの2冊を取り扱っており、売上は加藤さんに寄付される。詳しくはこちら(7月27日現在)

※掲載の写真は、仙台文庫よりお借りしたものです。

(取材日 2011年7月27日 宮城県仙台市)

(2011年7月29日 11:00)
From CANPAN NEWS
東北地方太平洋沖地震支援基金

CANPANプロジェクト

日本財団

CANPANレポート