自然科学の楽しさ溢れる授業を目指して【ホールアース自然学校】

ホールアース自然学校インタープリター山川勇一郎氏 現在、福島県いわき市を中心に被災地支援活動を行っているNPO法人「ホールアース自然学校」。同法人は富士山本校と国内5カ所の拠点をベースに、約30年に渡って自然体験型の環境教育を推進してきた日本の自然学校のパイオニア的存在だ。こちらの自然学校に参加する生徒たちは、カヌーやロッククライミング、熱気球や屠畜などのプログラムを通し、自然との共存を身につけていくという。
 そんな自然を知り尽くした同法人のインタープリター(自然ガイド)のひとりが、山川勇一郎さん。2009年、山川さんが中心となり、自然科学分野において重要な役割を果たす「研究者」「インタープリター」「学校教員」が連携し、環境教育の質的向上を図るためのモデル事業「科学と環境教育連携プロジェクト」が発足された。
 
「私たちは自然の大切さ、その楽しさ、あるいは怖さを伝えることを生業にしています。気持ちいいとか心地いいとかいう感覚的を教えるのは簡単ですが、やっぱりちゃんとした自然科学の知識や方法論を持った上で教えることが大事なんです。ただ、自然科学は奥深いけれど普通の人にとっては難解なことも多い。難しいまま大学の先生に教わっても興味がもてないで諦めてしまうこともあるわけですが、理解出来れば絶対面白いんです。そのために研究者、学校の先生、そして私たちのようなインタープリターが協力し合えたらいいなと、ずっと思っていたんです」(山川勇一郎さん)
 山川さんはまず、静岡新聞を通じて科学者とインタープリターが出会うミーティングを開催した。その話し合いの中で二者がプログラムを作って一緒に実施するコラボレーションツアーやなどが実現。しかし山川さんは、そこで満足することはなかった。

「自然科学に関して子供たちに伝える場が、イベントなどの一過性のものだけではなく、継続したものじゃないと社会的に広がっていくことは難しいだろうと思いました」(山川さん)
 そして彼はこのコラボレーションを学校教育に持ち込むことを考え、高校の授業に目をつけた。
「やっぱり生徒に伝えるのは先生が一番適任です。先生が主体になって自然科学を噛み砕いて面白く伝えることができたらさらに生徒が興味を持つ。最新の科学が知識として伝われば生徒も変わって、科学好きや環境に興味をもつ生徒が増えるのではと。なぜ高校生に注目したかというと、例えば小学生に最新の科学を伝えるためには、ものすごく噛み砕かないといけない。ただ、高校生が理解できる魅力的なプログラムが作れたとしたら、それを中学生、小学生向けにアレンジするのは、そんなに難しいことではないと思ったんです」
 
 そして2010年9月には静岡県立裾野高校、そして11月には静岡県立静岡高校で出前授業を行った。特に静岡高校では、発足から1年間の成果発表の場として、県内の大学教授や高校教育関係者、環境教育行政関係者など10数名を招き、インタープリターと地学教員のTT(チームティーチング)による公開特別授業を開催した。授業の対象は2年生38名。岩石の観察ではグループ内で積極的な議論が起こり、可動式木製パネルや木製ジオラマで「静岡のなりたち」を解説したときには、大きな歓声が上がったという。
「本当はこうしたインタープリターによる出前授業が毎日できればいいけどそれは難しい。ですから生徒に自然科学の楽しさを伝えるのと同時に先生方に対しても刺激を与えられたらいいと思っているんです。先生方に面白いと思ってもらって、授業の中に取り入れてもらったら、あとは先生方が工夫をして教えるプロとして教育現場で実践していただける。先生にもプロジェクトの担い手にぜひなって欲しと思っています。
 今後の目標は教育委員会も巻き込んで、正しい知識と学ぶ喜びを併せ持った授業を公教育の中で実現する下地を作ること。
「時間のかかることだと思いますが、教育委員会とも一歩ずつ信頼関係を作りながら、地道に進めていけたらいいと思っています」

(取材日 2011年1月26日 静岡県富士宮市)

(2011年7月22日 11:00)
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