過疎化の進む瀬戸内海の島々を救うサイクリングロード【シクロツーリズムしまなみ】

瀬戸内しまなみ海道 大島より撮影 現在日本では自転車が大ブーム。そんな自転車ファンたちに"聖地"として噂されているサイクリングロードがある。瀬戸内海の上を走る、瀬戸内しまなみ海道だ。
瀬戸内しまなみ海道とは、愛媛県今治市と広島県尾道市を、6つの島を経由して繋ぐ全長約70kmの西瀬戸自動車道の愛称。日本で初めて海峡を横断する自転車道が併設され、橋の上から海や島などを望みながら走ることができる、絶景のサイクリングコースとして、県内からだけでなく遠方からの自転車旅行者も多く訪れるという。
 この"聖地"を最大限に利用して地域活性化を図るのは、愛媛県今治市のNPO法人、シクロツーリズムしまなみ。
「私自身も自転車乗りではありませんでしたし、その楽しさもよくわからなかった。でも専門家や自転車好きの方たちを招いて意見交換するなかで、自転車っていうのは単なる目的地を繋ぐツールではないんだなということがわかってきたんです」
 そう語るのは同法人代表の山本優子さん。

 地元民たちによるサイクリングモデルコース作りの実行委員会が、この活動の前身。地域産業とサイクリングコースを組み合わせることで、愛媛県の大島、大三島、伯方島の過疎高齢化を解決しようという試みであった。もちろん山本さんもそのメンバーのうちのひとり。その後、島ごとの実行委員会から、島を超えて協議する「しまなみスローサイクリング協議会」が設立され、資源発掘やポタリング(自転車散歩)ツアーの作成など、具体的な方向性が話し合われることになる。
「美味しいがものあったら、これを使った自転車旅行者向けのお弁当を作ろうとか、木工細工を作っている作業所があるので、自転車旅行者向けの商品を作ってもらおうとか。身近な取り組みや気づきを、"自転車"というものを切り口にした新しい展開に置き換えて考えてきました」
 そうした流れから2009年4月、旅行者誘客活動をメイン事業とするシクロツーリズムしまなみが設立された。山本さん曰く、同法人は旅行業を目指す組織であるという。

「今は旅行先の地元が企画する"着地型旅行商品"ってありますよね。今、プランニングしているのは、自転車に特化したそれなんです。 商品の作り手、担い手は地元住民。『しまなみスローサイクリング協議会』のメンバーが自転車旅行者の受け皿。私たちは旅行者と繋がって協議会のところへお客さんを誘導する。そういう役割分担で機能している組織なんです」
 シクロツーリズムしまなみが企画するポタリングツアーは、島々の路地裏、プライベートスポットをゆったり楽しむガイドツアー。決まった日時に対して参加者を募集するのが基本だが、中には、「○月○日に行くからツアーを考えてほしい」という、オーダーメイドツアーの問い合わせも多いという。

「ツアーの開催以外にも、自転車乗り目線で作ったマップも発行しています。マップなんて発行してしまうと、乗り慣れた人はどこへでも行けるかもしれませんが、知らないところを効率よく巡りたいという方にはガイドツアーがおすすめです。一人では絶対に見つけられないようなスポットもご案内しますし、地元のお母さんたちが作った素朴な地元料理にご招待します。そういったこの土地の暮らしを感じることができる、そんなツアーを心がけています」
 また同法人には、夫婦でタンデム自転車(二人乗り自転車)にまたがり、10年間かけて世界88カ国を回った自転車乗りの憧れ、宇都宮一成さんもポタリングガイドとして所属。宇都宮さんの武勇伝に耳を傾けながら、瀬戸内海上サイクリングはかなりの人気ツアー。また、宇都宮さんが世界を回ったという、日本では公道で運転することができないタンデム自転車も、同法人の提案により愛媛県と広島県で乗ることができるようになったという。

 自転車人口も拡大したことによって、この土地を訪れる人は確実に増加傾向にある。ただし、山本さんは、自分たちができることは限られたことだけと語ってくれた。
「私たちがやっていることが、島の人たちに少しでも刺激になってくれたらいいと思っています。自転車って結構高価ですから、例えば部屋の中に自転車持ち込ませてくれる宿が出てきたりとか、そういうビジネスに関することを、主体的に進めてくれるようになるといいですね。それによって島がもっと盛り上がってくれたらいいですね」
 しまなみ海道沿いには自転車がレンタルできる「レンタサイクルターミナル」も多数揃っている。自転車を愛する、とまで言わずとも興味のある方は、ぜひ一度"聖地"巡礼のポタリングツアーに参加することをおすすめしたい。

(取材日 2011年2月23日 愛媛県今治市)

(2011年6月22日 10:00)
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