無印良品と消費者との密接な関係【くらしの良品研究所】

くらしの良品研究所コーディネーターの土谷氏 「商い」を通して環境への取り組みや世界の子どもたちへの支援などにも取り組む「無印良品」。そういった取り組みなどの情報を伝える窓口でもあり、消費者とのコミュニケーションの場となるのが、2009年にスタートした『くらしの良品研究所』というウェブサイト。このサイトを立ち上げ、さらには昨年有楽町MUJIで開催された『世界を変えるデザイン展vol.2』にも関わった、くらしの良品研究所コーディネーターの土谷貞雄さんに無印良品と消費者とのコミュニケーションなどについて聞いた。

―――もともと住宅コンサルタントとして活躍されていたそうですが、無印良品に関わるきっかけは?

土谷 ネットストアをはじめとする無印良品のウェブサイト(現在muji.netメンバー数250万人)が出来たのが2000年。2000年頃ってネットが普及し始めたばかりで、ネットで物を売るってことがみんなよく分からなかったんです。ネットを使ってものを売ることを考える前に、まず消費者とコミュニケーションしましょうということになって、アンケートを取ったりしているうちに、「こんな商品をつくって欲しい」との声に応えるべく、「モノづくりコミュニティ」という、企画から開発までの工程をプロジェクトとして消費者と共有するページを作りました。そこからいくつかヒット商品が生まれることになります。『体にフィットするソファ』『持ち運びできるあかり』などもそう。『体にフィットするソファ』は年間売り上げ10億円を超える大ヒット商品になりました。そんな中で、「家を作って欲しい」という意見もチラホラ出てきました。そして2002年~2003年にかけて本当に作ろうかという話になったんです。何故なら "くらしを提案する"ブランドとして、家はまさにそのシンボルに成り得るのではと考えたからです。そこで住宅系のコンサルティングをやっていた僕に声がかかったのがきっかけです。
その後、メンバーを集めて商品開発をして、2004年に最初の家が出来ました。現在では年間200戸を超えて販売されています。住宅事業が始まって、それから紆余曲折あってコミュニケーションの新しい仕組みについて考えることになるのですが、それが発展したのが『くらしの良品研究所』です。

――紆余曲折といいますと?

土谷 正直あまり売れなかったんですよ(笑)。それでまあいろいろあって、僕は住宅事業部の責任者を降りる事になるんですけれど、原点に戻ってネットを使ってお客さまがどういった暮らしをしているのかを調べようと思いました。始めたらなんと1万人を超える人からの解答が集まった。驚きましたね。みんな実はこうしたことをコミュニケーションしたいと思っているんだと。そのうちコラムも自分で書いて、アンケートの結果をみなさんにも伝えようと。そしてコラムに対する投稿もあって、それに対して返信もする。その頃、僕は他のディベロッパーたちとのもコラボレーションしてましたから、アンケートを反映した住宅もちょっとずつ出来上がってきたんです。そうなったらページビューもドンドン上がりました。アンケートで調べるとか聞くという行為は、共感を作る仕組みでもある、コミュニケーションの仕組みのひとつなんだということに気付きました。

―――実際に読者の家に訪ねられたこともあるとか?

土谷 そう。訪問させてくれる家を募集すると1000人くらいの人が「見に来てくれ!」と言ってくれます。もちろん、それまでにはかなりコミュニケーションを取っていますけどね。だから、その人が日曜日、何時に買い物して、家には自転車が何台あってとか、大体分かってる(笑)。そのくらい密度が高い。他にもテレビを観るときはどんな姿勢で観てるのか。椅子に座ってるのか床に座ってる観るのか。椅子だったらどれくらいの高さなのか、カウチなのかソファーなのか。テレビの大きさや位置。パソコンを使いながら観るんだったら、パソコンで何をしながらなのか。そういうのを徹底して調査していくわけです。

―――そんなに細かく!?

土谷 そういった声をマンションの商品企画に取り入れて、実際にマンション作ってみました。その当時は時間があったから窓際だからひとり何でもやって、しかも何をやっていてもよかった(笑)。凄く面白かったですね。ひとつだけ心がけていたのは、お客さまからのレスポンスが来たら、社内のマネージャー以上の全員に同時配信すること。お褒めの言葉もクレームも全部。僕が返信したものも、それに対して戻ってきたものも。するとお客さまから上の人たちに考えが伝わるようになった。お客さまは味方なんだとつくづく思いました。自分の声を自分で誰かに伝えるということではなくて、お客さまの声がダイレクトに伝わることが、企業にとっては大事なのだと思いましたね。

―――小さく始めた事が徐々に認められてきたと。

土谷 認められたのかどうかは分かりませんが、そうこうしているうちに住宅事業に関わらず無印良品全体のの新たなコミュニケーションの中心としてやらないかと言われました。それて一昨年2009年の11月から『くらしの良品研究所』というサイトが始まったんです。現在は住まいや緑、家事についてなど、個別に調べながらお客さまとのコミュニケーションをしていきながら、住宅事業だけではなくて、くらし全般を考えていこうということで。それまでは僕一人だったけど、今は5名に増えて、大組織になっています(笑)。

――昨年の10月には有楽町MUJIで『世界を変えるデザイン展vol.2』が開催されました。それをきっかけに、GRANMA代表の本村拓人さんたちと、環境プロダクトの可能性にも取り組んでいるようですね。

土谷 そうですね。僕は彼らみたいな、自分で道を作っていく若者たちがどんどん増えて欲しいと思っています。そして僕ら大人たちは応援することが役割。もし大人が応援しなかったら、自分たちだけで社会を変えることは、さすがに難しい。そういう人たちが活躍する場を一生懸命作ってあげることで、新しい時代がやってくるかもしれないなって思っています。結構若い人たちとのお付き合いはあるんですが、学生時代はみんなピュアなんだけど、会社に入ってから「社会をよくしたい」みたいな事を言ってると"青臭い"みたいなことになる。しかも日々の業務の中でそれどころじゃなくなってしまう。だからどんどんピュアな心が消えていってしまう。でも、そういうピュアなところもに、また戻してあげられる、もしくはバランスを保てるようなサポートが出来れば嬉しいなと思って。だから、若い人たちを応援たり、一緒に何かをやっていったり、そうしたことを最優先にしようと思っています。

土谷貞雄さんプロフィール
1960年東京に生まれ。1984年日本大学理工学部建築学科卒業、1986年イタリアローマ大学へ留学、1990年帰国、ゼネコンや設計事務所での経験を積み、その後、住宅の商品企画などを行う、コンサルトとして独立。2004年株式会社良品計画へ入社、「無印良品の家」を企画・販売する住宅事業の立ち上げを行い、全国展開を実現した。2008年7月、独立して、暮らしに関する研究とマーケティングに関して実践を行う。現在、株式会社 貞雄 代表。現在「くらしの良品研究所」はfacebook上でファンページを開設。1日で11万pvを誇る人気ページとなっている。

(取材日 2010年12月6日 東京池袋)

(2011年6月16日 11:00)
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