アレルギーに悩む人たちのための"ハシゴ"となるために【アトピッ子地球の子ネットワーク】

アトピッ子地球の子ネットワーク事務局長の赤城智美さん ひどい湿疹や痒みを伴うアトピー性皮膚炎、魚介類、ピーナッツ、蕎麦などを摂取することによって重篤な症状を引き起こす食物アレルギー。これらに代表されるアレルギー性疾患や、化学物質過敏症に苦しむ患者やその家族を支援するNPO法人アトピッ子地球の子ネットワークNPO法人アトピッ子地球の子ネットワーク が設立されたのは1993年。事務局長の赤城智美さん自身も、食物アレルギーの子どもを抱える一人だった。
「子どもがまだ赤ちゃんの頃はミルクを口に入れた瞬間、まるでポンプのように吐き出してしまって、何を食べさせていいのかさえ分かりませんでした。体重は減っていく一方で、いくら食べさせても全然太らない。最初はとても不安でした」
 餃子の皮はライスペーパーで代用し、白身魚をすりつぶして、卵白を加えないかまぼこを手作りするなど、1日のほとんどの時間を、アレルゲン除去メニューの手作りに費やしたという。

「子どもが6歳のとき、食事のことがきっかけで夫と離婚してしまいました。"普通のブルドッグソースが食べたい"なんて些細なことで(笑)。"もう耐えられない!"ってなってしまったんだと思いますが、子どもを受け入れる気持ちがないことに対して、腹立たしさが先にたってしまったんです」
 アトピッ子地球の子ネットワークの調べによると、アレルギー性疾患を持つ子どもの母親が、子どもの治療のために使う時間は1日に2~3時間。さらに朝食を作って食べさせるとすぐに昼食の準備にかかり、そしてすぐにまた夕食の準備。
「自分の時間どころか、子どもと遊ぶ時間もない。子どもが成長しているところを冷静に見ることも少なくなる。病気を通して子どもを見てしまう時間がばかりが多くなります。それは母親にとっても、子どもにとっても不幸なことです」

 同法人を立ち上げる以前、赤城さんは自分と同じ悩みを抱える人達のために何かできないかと思い、『奇妙な出来事アトピー』というアトピーに関する教材映像を上映するために全国50ヶ所を回った。そこで出会う母親たちは、一様に罪悪感にさいなまれていた。
「旦那さんやその家族から責められるという場合も多いんです。"お前が悪い""うちの家系にアレルギーはいない"って。そんなお母さんたちの話を聞いて、語り合う場を設けないといけないなと思ったんです」
 基礎調査をしながら全国を回った2年間を含めると、その活動は今年で20年になる。この20年でアレルギー患者と親たちの生活はどのように変わってきたのだろうか。
「食品のアレルギー物質の原材料表示も義務化されましたし、アレルギー対応の食品も多くなってきました。軽い症状の人はかなり生きやすくなったと思います。でも症状の重たい人の場合はあまり変わりません。問題は地域間格差。地域によっては、いいお医者さんと出会うことはなかなか難しい。それと学校現場の理解がまだまだ低いことも問題です」

 文部科学省は、給食における代替食などの食物アレルギー対応に 取り組む姿勢を見せている。しかしそんな動きに対する抵抗も根強く残っているのだという。
「教育委員会に頑固な人が1、2人いたりすると"学校は病院じゃないんだから、病院食は出さない"と言って抵抗することもある。給食は教育として実施されているのに"教育"が頭から抜けちゃっている。"どの子もすこやかに学ぶ権利がある"という教育の機会均等について思い起こしてもらいたいと思います」
 アトピッ子地球の子ネットワークは、このような状況を少しでも変えていき、患者や家族のQOL(生活の質)向上のために、食農教育による環境教育事業、調査研究事業、さらには成人のアトピー患者が食物アレルギーの子どもと触れ合うキャンプの開催など、様々な活動を行なっている。
「私も患者の親ですし、ボランティアにも患者の方はたくさんいます。患者が知ってる患者の実態を、患者側から発信していくというのが大事です。それが悩んでいるお母さんたちのためのハシゴ替わりになるのではないかと思っています。助けることはできませんが、一段一段解決へ向かうためにハシゴを登る手助けができればいいなと思っています」


(取材日 2010年11月24日 東京都西早稲田)

(2011年3月 3日 16:00)
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