人と街を元気にする紅茶専門店【Y's tea】

世界の紅茶がそろう「Y's tea」オーナーの根本泰昌氏
 先日行なわれた、企業の社会的責任(CSR)活動に実績のある企業を表彰する「第4回市民が選ぶ『CSR大賞』」。誰もが知っているような大企業ばかりがノミネートされる中、餃子で有名な宇都宮市にある従業員7人の小さな企業「Y's tea(ワイズティー)」がエントリーされた。
 同社はオーナーの根本泰昌さんが、子どもの頃から馴染みのあった曲師町のオリオン通りにオープンさせた紅茶専門店。常時100種類以上の茶葉を用意し、ティールームとしても利用することができる。
 根本さんの前職は、東京の製薬会社に務めるサラリーマン。電車通勤の毎日でふとこんなことを感じたという。
「毎週月曜日の朝の地下鉄は、みんな下を向いていて物悲しい顔をしているサラリーマンばかり。子どもたちがこんな光景を見たら、働くことに対して恐怖や不安を感じてしまうのではないかと思いました」(根本さん)
 根本さんはそんな「病気ではないが、疲れている」"未病"の人が増えている状況をどうにか出来ないものかと、「毎日」「誰でも簡単」に「好きなとき」に楽しめて、気づかぬうちに「癒されて」「笑顔」になれる、そんなものを探し始めた。
「思いついたものを5000個くらいはリストアップしました。お酒も癒しになるかもしれませんが、飲めない人もいます。海外旅行もリフレッシュできるけど、お金もかかるし簡単とは言えません。そうやってひとつひとつ?を付けて消していったんです」(根本さん)
 膨大なリストから削っていった結果、最終的に残ったのは紅茶だけだったという。

「元気ない人に"頑張って"とは言えないときもありますよね? そんなときに心を込めた一杯の紅茶であれば、言葉はなくても気持ちが伝わることができるのではないかと感じました。紅茶というとても身近なアイテムを使って、人々、そして地域を元気にしたい。そう思って開業するためにサラリーマンを辞めることにしたんです」(根本さん)
 しかし2006年の開店当時の総務省統計局の調べでは、宇都宮は紅茶の消費量は最下位クラス。周囲から「必ず潰れると」と揶揄されながらの船出であったという。
「紅茶の飲まれていない土地の、家賃が都内並みに高いのに疲弊している商店街に開業して、しかも地域活性化という社会貢献活動を考えてのビジネスなんて、絶対に上手くいかないと言われました」(根本さん)
 その評判を打ち消すために、根本さんは自らブレンドした世界で唯一の紅茶を作ることにこだわった。ある時は、まちおこしのために栃木の名産の「とちおとめ」を使い、ある時は地元のサッカーJ2の栃木SCや、日本バスケットリーグのリンク栃木ブレックス、アイスホッケー・アジアリーグの日光アイスバックスの応援紅茶を作るなど、開業から約5年間、地域と共に紅茶作りを続けてきた。根本さんのそんな活動のおかげもあって、2010年の統計では、宇都宮市が紅茶の消費量日本一に輝くこととなる。

「餃子の臭いしかしないなんて言われている宇都宮に、何か文化の香りが必要だと思ったんです。これからも紅茶で、宇都宮の街と元気のない人たちを力づけていきたいと思っています」(根本さん)
 惜しくも『CSR大賞』を受賞することはなかったY's tea。しかし「本業の紅茶とCSR活動の関連性が高い」「紅茶を使った地域活性が宇都宮以外でも応用可能」と高い評価を得ることとなった。
 現在では全国から紅茶教室や地域活性の講演や「ご当地紅茶」の作製依頼があるという根本さん。Y's teaのCSR活動は、宇都宮だけでなく全国を元気にしていくこととなるだろう。
 
(取材日 2010年11月12日 栃木県宇都宮)
(2010年12月 7日 18:00)
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