産後の苦悩を救う"美しい母"たち【マドレボニータ】

ヘルスケアプログラムに参加する母親たちの様子
 第5回CANPANブログ大賞で、フリーテーマ特別賞を受賞した「NPO法人マドレボニータ」。スペイン語で「美しい母」と名付けられたこの団体は、出産後の母親の心と体のヘルスケアプログラムの開発・実践・研究を行う、母たちによる母たちのためのNPO法人だ。
 代表の吉岡マコさんが出産したのは1998年のこと。そのとき産後の母親に対するケアの体制が、日本にはほとんどないということを痛感したという。
「妊娠・出産に関しては手厚いケアが受けられます。でも生んだ後は赤ちゃんのケアはあっても母親へのケアはほとんどありません」(吉岡さん)
 産後はホルモンのバランスが崩れ気味となって情緒不安定、さらに出産によって体力が低下しているため、子どもをあやすことさえ一苦労。子どもが思うように泣き止んでくれないなど、イライラしてしまう母親も多い。中にはうつ状態になったり、育児ノイローゼ、虐待などのケースに発展することも少なくない。そんな産後の悩みを抱える母親たちをサポートするためには、まずは体力づくりからと考えた吉岡さんは、運動生理学やヨガ、ピラティス、東洋医学、ダンスセラピー、骨格調整などを学んでいた経験を生かし、出産の半年後に「産後のボディケア&フィットネス教室」を開設。2007年11月にNPO法人化した。

 「マドレボニータ」が提供するヘルスケアプログラムは1回2時間、計4回。「有酸素運動」、「自己表現とコミュニケーション」、「セルフケアの知識と技術の習得」の3つを柱として構成されている。
 有酸素運動として取り入れているのは、バランスボールを使った筋力と持久力を回復させるエクササイズ。産後の体に負担をかけることなく、赤ちゃんを抱っこしながらでもできるのが特徴的。体力・心配機能の向上だけでなく、体型改善、シェイプアップの効果もある。
 そして気持ちよく汗をかいた後は、「自分の思いを話す」「話を人にきいてもらう」「人の話に耳を傾ける」といった、コミュニケーションスキルを高めるための「シェアリング」と呼ばれるワーク。産後はどうしても子どもを媒介とした会話だけになりがちで、大人同士のコミュニケーションが減ってしまいがち。人の話に耳を傾け、自分のことを言葉にする中で、自分自身と向き合うことができ、新たな気付き・発見があるという。
 最後は肩こりの解消法や、自分でできる骨格調整、ウォーキングなど、日常に活かせる具体的なセルフケア。これらがすべてトータルに体験できて、2時間1レッスンの内容となる。

 このようなプログラムは代表の吉岡さんだけでなく、現在19人いる認定インストラクターによって、北は北海道、南は沖縄まで、全国27箇所 の教室で行われている。東京・世田谷区の下高井戸教室で教える仲井果菜子さん、杉並区の高円寺教室で教える竹下浩美さんも、もともとはヘルスケアプログラムを受講した生徒のひとりだった。
「インストラクターになった人は、産後ケアがないことに人一倍びっくりして憤慨した人たちじゃないですかね(笑)。産後の大切さに対する思いは人一倍強いと思います」(竹下さん)
「世の中に産後ケアという文化がないことは、子育てがひと段落するとつい忘れがちなのですが、私たちはしつこく覚えていますよ(笑)」(仲井さん)

 マドレボニータの活動はヘルスケアプログラムからさらに発展し、産後の女性たちの現状を調査した「産後白書」の刊行をはじめ、産休・育休中の女性を対象とした職場復帰支援プログラム「NECワーキングマザーサロン」、産後に関する書籍の出版など、インストラクターだけでなく、事務局スタッフ、理事、会員たちによって幅広い活動が行われている。
「産前の母親に対しては、手厚いケア体制や、周りからのサポートが確立されている。産後ケアも、そうしたひとつの文化になって欲しい。医療や行政がカバーできていないところを、産後を経験した私たち市民発で、その文化を作り上げていきたいと考えています」(仲井さん)
 
(取材日 2010年11月15日 東京都杉並区)

(2010年12月22日 08:00)
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