タイムリーな支援が子どもを伸ばす【発達障害児支援サークル「のびのび」】

「のびのび」広報担当の島田博氏
 第5回ブログ大賞で日本財団特別賞を受賞した、島根・益田市(注1)の発達障害児支援サークル「のびのび」。孤立を深めていた親たちが、手をつなぎあうことから始まった活動は、いま地域へ広がり始めている。

「子どもが小さい頃は、医療機関に行っても『親の責任だ』と言われるばかりだったんですよ」
 「のびのび」の広報担当、島田博さんもまた、発達障害児の父親だ。
「発足は6年前です。発達障害の子どもを持つ母親は、私の妻も含めて、みんな一人で悩んでいました。ある時、呼びかけてくれる人がいて、同じ悩みをもつ母親同士で集まってみたんです。そうすると井戸端会議感覚で、どんどんアイディアが出て、盛り上がっていった。母親だけじゃなく、子どもたちにも仲間がいたほうがいいんじゃないか、とか。そのうちに父親たちも巻き込まれて...」
 参加者たちの関係を、より深めることになったのが、インターネットの存在だ。
「ブログは、情報交換に役立っています。ただ狭い地域ですから、コメントすると誰だかわかってしまう。そこで、やりとりは、会員専用の掲示板や、メールでやっています」

「島根は、もともと閉鎖的な土地柄の上、三世代同居が多いんですね。発達障害の子が生まれると、祖父母は受け入れられずに『嫁が悪い』という話になる。すると、母親はますます孤立を深めてしまうんです」
 また、サークルに集う親たちの間でも、子どもに対するスタンスには差がある。
「発達障害に対する支援の必要性を、きちんと認識している人と、わかっていない人がいます。でも生涯を通じた支援は、絶対に必要なんです。うまく支援すれば『こんなに子どもは変わるんだよ』ということは、皆さんに知ってほしいですね」
 「のびのび」は毎月、子どもたちが文字通り「のびのびと活動」できるよう、調理・創作など支援のイベントを開催している。入会金や年会費は徴収しない。発達障害の子どもたちの状態は一人一人違うため、自分に合わない活動には参加しなくてもいいように、毎回の実費300円だけを徴収しているのだ。

 支援活動の中でも人気が高いのが、有酸素運動の「ボウリング」だ。
「個人プレーで、コミュニケーションをとらなくてもいい。発達障害の子どもに向いています。何回もやっていると、みんな前よりもいいスコアを出したいという気持ちが出てきて、家で練習してきたりするんです。有酸素運動なので、しっかり酸素を吸うことができて、体にもいい。いいことずくめなんです」
 直接の支援活動とならんで、地域社会に向けての講演会などの啓発活動にも力を入れている。専門家を招いての、内容の濃い講演会やセミナーは、リピーター率が高く、参加した地域の人々の意識は、確実に変わってきているという。
「発達障害の子どもが事件を起こすと、センセーショナルに報道されますよね。怖い、という話になる。でも講演会に来てくださる人たちは『あれは違うよね』って」
 のびのびの取り組みは、着実に成果を挙げつつあるのだ。

 現在の課題は、そろそろ社会に出る年頃になる第一期生たちの「就労」だ。アスペルガー症候群をもつ島田さんの長男も、現在17歳の高校生。
「発達障害の子どもたちは、働くというのがどういうことなのか、よくわからないんですね。それで、『のびのび』の活動に手伝いに来てもらって、アルバイト代を支払うことを考えています。それで、就労と金銭のつながりを、実体験で教えたいと思っています」
 親としてはベテランの域に入った島田さんだが、それでも壁に当たることも多いという。
「子どもを受け入れたように感じても、また迷ったりの繰り返しなんです。でも今は、落ち込んだときに救ってくれる仲間がいる。全員が同じときに落ち込んでる、ってことはないので。迷っていても『大丈夫、こういうところはちゃんと成長してるから』って冷静に言ってもらえると、我が子を客観的にみることができるんです」

(注1)島根県益田市...県庁所在地の松江から160キロ、2時間に1本しかない特急で所要時間2時間半という「交通不便な地域。社会基盤も整備されていません」(島田さん)。松江や出雲は旧出雲国、益田は旧石見国で、気候風土もかなり異なる。

(取材日 2010年10月25日 島根県益田)

(2010年12月21日 00:00)
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