埼玉から宮崎まで、自転車で"思い"を届けた大学生

東国原宮崎県知事と一緒に写る小林大地氏
 学生最後の夏休み。自転車に乗って自分の力だけでどこか遠くまで。そんな"自分探しの旅"に出る若者は少なくない。しかしそこに社会貢献というエッセンスを加えたことで、全国から注目されたのは、明治大学に通う小林大地さん
"最後の夏休みの思い出作りに、自転車で京都にでも行こうかなと思います"
 酒の席で放ったそんな冗談は、酒席を共にした新聞記者の助言も重なり、社会貢献の旅へとプランチェンジされることに。
「京都まで行くなら、口蹄疫で大変な宮崎にまで行ってみたら? そう言われてよく考えた結果、じゃあ、やってやるよと(笑)」
 小林さんは大学の講義を通じて、ボランティアやNPOなどの活動を学んでいた。そんな経験から、チャリティへの興味は持っていたという。

「自分の仕事が忙しいのにも関わらず、社会のために活動している大人たちを見て、カッコイイなあとは思っていました。それと、就職が決まらずに1年間留年したことも負い目に感じていて、自分を変えるような、大きなことがしたいという思いはありましたね」
 そこで彼が考えたプランは、実家のある埼玉県からゴールの宮崎県庁まで自転車で走りながら、旅の行程をブログやツイッターで発信。そこから口蹄疫支援の募金を募るというものだった。
「出発する前に、まず東国原知事にツイッターで『大学生の私が、メッセージを集めながら埼玉から宮崎まで走ります』と、メッセージを送りました。するとご本人から『ありがとうございます。無事をお祈りいたします』という返信があったんです」

 東国原知事が小林さんに宛てたつぶやきは、たくさんの人たちにリツイート*1され、その拡散効果によって小林さんのブログにアクセスが集中。一気に1日1600ビューの人気ブログとなる。しかし、注目を集めると同時に中傷も目につくようにもなった。
「『2ちゃんねる』では相当叩かれました。"メッセージを集めて誰が喜ぶんだ"とか、"1ヶ月必死でアルバイトして、そのお金を全額寄付しろ"とか。私も"そうかもしれない"なんて思って、旅をやめようかと思ったこともありました。でも、『2ちゃんねる』で叩かれる経験なんてなかなか出来ませんから、今では自慢話です(笑)」
 不安を抱えながらのスタートではあったものの、旅の途中で出会う人々はとても温かかかった。
「ブログを読んでくれていた方に泊めていただいたり、ご飯をごちそうしていただいたりと本当に助かりました。旅の資金として銀行に30万円用意していたのですが、最終的に10万円くらいしか遣いませんでした」
 ツイッターやメールでの温かい励ましも毎日届いた。しかしそれがプレッシャーになったこともあるという。
「走りながらブログやツイッターで情報発信するというのは、思った以上に大変でした。疲れて寝たくても、みなさんのメッセージに返信しないといけない。でも全部は到底無理。だけどせっかく応援してくれてるのに...、そんな風にプレッシャーに感じてしまったこともありました。ブログも朝にハンバーガーショップでまとめて書いて、それで午前中が終わって出発が遅れてしまうということもありました」

 そんなプレッシャーと闘いながら入り続けた小林さんは、出発から36日目の9月2日、ようやく大分と宮崎の県境を抜けた。そこで出会った宮崎の畜産農家の人たちの表情は、驚くほどに明るかったという。
「新しくできるサービスエリアに、畜産品の売店を作る計画を教えてくれました。みなさんは、もうすでに前向きに頑張ってらっしゃいました。勝手に思っていた暗い印象ではなく、みなさんはとても明るくて、凄く嬉しかったですね」

 そして翌日の9月3日はゴールの宮崎県庁に到着。旅の途中で出会った人たちから託された宮崎県への応援メッセージを、東国原知事に手渡すこともできた。
「知事に"ツイッターでたくさんの人が、君が来ることをつぶやいていたよ"と言われてびっくりしました。僕みたいな学生が世間に発信できて、しかもそれが有名人の東国原知事までにまで伝わっている。ブログやツイッターの力って、改めて凄いと思いました」
 小林さんがこの旅で学んだこと、それは"思い"の大切さだという。
「"そんなことするなんて本当に馬鹿だな。でも、思いがなければそんな馬鹿なことはできない。だから助けたくなる"そんな風に言ってもらう機会が何回かありました。高鍋町役場でも初めは決して歓迎ムードではなかったけども、みなさんからのメッセージを見せたらパッと笑顔になって。"思い"が伝わったのかなって」
 コーヒーメーカーへの就職も決まって来年の春には社会人となる小林さん。今後の目標は本業で頑張りながら、何らかの形で社会貢献に関わること。小林さんの次の"思い"にも期待したい。

*1 ツイッターで他のユーザーのツイート(つぶやき)を引用形式で、自分のアカウントから発信すること。

※ 写真は小林大地さんからお借りしたものです。

(取材日 2010年11月9日 東京都虎ノ門)
(2010年11月22日 10:00)
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