音楽が「人を巻き込む力」はとてつもない【ブラストビート】

ブラストビートイベントの模様
高校生らが音楽イベントを企画・運営し、幅広い経験を積むことで、人間的な成長を得るアイルランド発のプログラム「ブラストビート」。日本組織は僅か1年前にスタートしたばかりだが、成長の早さは驚くほどだ。

「変わる、ジブン。変える、ヨノナカ。」ブラストビートのキャッチコピーだ。この言葉ほど、プログラムの本質を端的に表現しているものはないだろう。
 基本的な仕組みはこうだ。高校生らが10人ほどのチーム(=音楽会社)を作り、3ヶ月をメドとした準備期間を経て音楽イベントを開催する。メンバーは社長、企画、財務、広報、社会貢献などの担当を決めて責任を分担。バンドの選定(原則として10代のメンバーが含まれていること)、交渉、会場選定、PR、ウエブサイト作成、チケット販売、会場運営などすべてを考えて実行する。イベントの収益のうち、少なくとも25%はNPOや慈善団体などに寄付することが求められる。
 プログラムを考案したのは、アイルランドのロバート・スティーブンソン氏。氏は高校生たちが、麻薬や酒に溺れる姿に接し、彼らに「生きる力」を得てほしいと知恵を絞った。そして誕生したのがブラストビートだ。

 プログラムの概要を聞いて、「楽しそう!」と、思われた方も多いだろう。実際、若者の多くは音楽好きであり、誰もが興味を示す。しかし、イベント開催までの道のりは、決して平坦なものではない。誰もが、最初は面白がって活動を始めるが、気がつくと修羅場になってる。みんな否応なく成長せざるを得ない...それが「ブラストビート」なのだ。
 ブラストビートが日本で動き始めたのは、09年の夏。NHKの番組「チェンジメーカー」で、アイルランドやイギリスでの取り組みが紹介されたのがきっかけだった。番組に影響を受けた人々が動いて、東京の事務局が設立されたのである。
 事務局メンバーの勤務先は、金融機関、投資会社、放送局など多彩であり、中には二人の会計士も含まれる。音楽「ビジネス」をモチーフとするブラストビートは、社会の最前線で活躍する人々を夢中にさせる、従来にないタイプの市民活動であるといえよう。

 ブラストビートの勘所は、いかに人間関係を作っていくかにある。
 音楽イベントは、出演者や会場スタッフなど、たくさんの人々が関わって初めて開催が可能になるもの。ふだん学校という閉鎖社会で暮らしている若者にとっては、外部との接点がたくさんできるわけで、それだけでもいい経験になるのだ。
 関わった大人の多くは「君たち高校生か、面白いね、がんばれよ...」と、一生懸命支援してくれる。ところが、ここに一つの「落とし穴」が待ち構えている。
 ビジネスの現場は、簡単なものではない。チケット販売やバンドとの交渉、仲間うちでの意見の対立など、いくつもの「修羅場」が待ち構えている。若者にとっては初めての面倒な経験ばかりだ。ところが逃げ出したくなっても、周囲が積極的にサポートしてくれているので、引くに引けない。腹をくくってやらざるを得ない、と言うわけだ。

 たとえば、収益の25%をどんな団体に寄付しようか、ということ一つをとっても、議論の種となる。100%を寄付する例も多いそうだが、そこは10代の若者、お金が潤沢にあるわけではない。がんばった以上、できれば少しは小遣いにしたいのが人情だ。どれくらいの収益が見込めるか? 寄付金の額がこんなに少なくていいのか? メンバーの議論は果てしなく続く。
 プログラムには、至る所にこうした「仕掛け」が張り巡らされ「本当によくできている」と事務局スタッフも話す。何より、ブラストビートのテーマである「音楽」は、人を巻き込む力がとても強い。イベントは間違いなく暖かいものになり、達成感も大きくなる...というわけだ。
 ブラストビートを通じて「チャレンジする力」を身に着け、将来的には社会起業家として活躍してほしい。それが、事務局スタッフ一同の願いだという。

※なお、この写真はブラストビートからお借りしたものです。

(取材日 2010年6月21日 東京都虎ノ門)
(2010年9月 1日 00:00)
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