杜の都で山仕事に魅せられた人々【仙台市森林アドバイザーの会】

旗立3丁目緑地 植生調査の様子

杜の都、仙台市が始めた「森林アドバイザー養成講座」。ここで出会った人々が結成した市民団体が「仙台市森林アドバイザーの会」だ。運動は着実に育ち、里山での活動は全国的にも注目されるようになっている。

 「仙台市森林アドバイザーの会」は、市の主催する養成講座の1期生、2期生を中心に2004年に結成された。

 10年7月現在の会員は76名。もともと山の中で生まれ育ち、日常的に山仕事に親しんできたメンバーもいれば、講座を受けるまで林業に関してはまったく素人だった人もいる。会員に共通しているのは「山仕事が好き」という気持ちだ。

 結成されてから数年間の活動は、植樹祭や市民収穫祭など市の行事の手伝いがほとんどだった。ところが、会員の中から「せっかく知識を身につけたのに、これではものたりない」「独自に活動してみてはどうだろう」という声が上がってくるようになる。

 そこで、この2~3年、森林整備への取り組みを始め、09年4月からフィールドでの作業が本格的にスタートした(*1)。中心になっているのは、「旗立3丁目緑地」と「箱倉山」の2ヶ所である。

 仙台の中心部にほど近い住宅地である「旗立3丁目緑地」は、もとは炭や薪を取るための雑木林であり、仙台一高奨学会が管理していた。いまから40年ほど前、この山に杉が植えられる。将来的な売却益の奨学金への利用を計画したのだ。当時としては、至極まっとうな発想であったと言えよう。

 ところが60年代に始まった木材輸入自由化により、日本の林業は実質的に崩壊。結果として多くの杉林が放置されることになった。一高奨学会の旗立山も同じ運命を辿る(*2)。

 伐採木材の生産を目的とした「人工林」は、下草刈りや間伐、枝打ちなど日常的な手入れが不可欠な林だ。放っておくと、病害虫の被害を受け、表土が流出して土砂崩れを招くなど、国土にとって脅威となる。人が寄り付かなければ粗大ゴミが置き去りにされる。「放置林」は全国に共通した深刻な問題なのだ。「仙台市森林アドバイザーの会」の活動が、全国的にも注目されているゆえんである(*3)。

 旗立山フィールドは、広さおよそ1.32ヘクタール(*4)。08年9月から始まった活動では、まず粗大ゴミの片付け、そしてどれぐらいの木が生えているか「密度調査」からスタート。杉の人工林を、市民に親しまれる林に作り変えるという目標が決まった。

 とはいえ、スギと雑木の『混交林』、背丈の違う木が共存する『輻輳林』、『複層林』、年代が異なった木が共存する『異齢林』といった要素を実現するのは生易しいことではない。一種の造園作業であり、手入れも簡単ではないという。「市役所も関わりたがらない(笑)、大変な事業なんですよ」(仙台市森林アドバイザーの会・寺沢さん)

 09年4月から間伐を開始。つるが複雑に絡み、小潅木も生え放題で、作業は難航したが、地道な取り組みを続けた結果、現在は明るい林へと変身。散策路やベンチも取り付けられた。10年度は、隣接の新フィールド(2.4ヘクタール)への取り組みが始まっている。

 仙台市森林アドバイザーの会が、とりわけ気を配っているのが「安全」である。チェーンソーの扱いは慎重が求められるし、木は思った方向に倒れてくれるとは限らない。林業は危険と隣り合わせの仕事なのだ。労災保険料率、1000分の60という数字もそれを物語る(たとえば「金融業、保険業または不動産業」は、1000分の3、わずか20分の1である)。

 もう一つ、会が重視しているのが「情報公開」だ。活動を行うごとに、必ずブログに報告がアップされ、また毎月詳細な会報が発行され、インターネット上で見ることができる。活動に参加できない会員も情報を共有できるように...と、積極的な広報活動を行っているわけだ。また、会では、様々な団体からの助成金・補助金などを受けているが、資金の使途公開という意味もある。さらにこうした実績が評価されて、新たな助成につながるという好循環も生まれている。このあたり、各地の市民運動にとっても参考になりそうだ。


(*1)会では、このほか自然観察イベントやクラフト教室などを自主事業として行っている。

 10年8月2日には、旗立3丁目緑地において自然体験会を開催。隣接の山田自由が丘子供会の会員28名が、丸太切りなど森の中での体験を楽しんだ。

(*2)現在では仙台市が買い取り、管理を行っている。

(*3)仙台市森林アドバイザーの会は、08年暮れ(株)ウィルシードにより実施された「市民活動と企業の寄付のあり方を探る」モデルプロジェクトに選定され、40万円の寄付を受けた。詳しくは参照のこと。

(*4)最初に活動を開始した区域の広さ。現在はこの部分を「旗立山南」「旗立三丁目緑地南」と名づけ、今年4月から手がけているフィールドを「旗立山北」「旗立三丁目緑地北」と呼んでいる。

※写真は仙台市森林アドバイザーの会よりお借りしています。 

 

(取材日2009年12月8日 宮城県仙台市)

(2010年9月17日 15:00)
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