社会起業とはこれまでの社会の仕組を変えること(前半)【今一生氏】

『社会起業家に学べ!』の著者 今一生氏 これまでニートや自殺未遂の当事者など、心にトラウマを持つ人たちに取材し、数々の著書を発表してきた今一生(こん・いっしょう)氏。ここ最近の著書では「働き方」をテーマとしたものも多く、2008年に発表した「社会起業家に学べ!」では、NPOやNGOなど、いわゆる社会起業に照準を合わせ、その世界では有名な全国の社会起業家たちを紹介。現在も社会起業家たちへの取材を続け、自らも社会起業支援サミットを主催する今氏に「社会起業」について話を伺った。

――ここ最近、数多くの社会起業家が台頭してきたという印象がありますが、その背景には何があるとお考えですか?

今 ひとつは政治、行政に対する期待値が下がったということ。任せていても社会問題は放置されるか温存されるかのどっちかだというのを、みんな薄々気付いてきたんです。そしてもうひとつが、働く側のニーズ。これまでは働いて飯が食えればよかった。でも自分だけが飯を食えればいいという目的だけでは働けない世代が出てきたんです。それだけでは自分が必要とされているのか、社会的に価値があるのかなど、存在意義がピンと来ない。自分の社会の的価値を、自覚的に捉え始めた世代が出てきたということが、背景にあるのではないでしょうか。

――最近は「社会起業家」に憧れる若者も増えてきましたね。

今 社会起業家に必要なもの、逆にこれがないと社会起業家じゃないっていうものは、僕はコンパッション(*1)だと思う。難しく言うと、社会的課題に苦しみ続ける人や物に対する変革への共感。社会には見過ごせない問題はいっぱいある。だけど体はひとつしかない。だから実際に何をやるのかということが重要になる。何故そのことに対してあなたが動くのかと。だって他の誰かが、すでにやってるかもしれないじゃない? 例えばカンボジアの地雷撤去なんかの国際協力は、すでに現地のNGOが動いてたりする。何故日本でやらないといけないのかと思うと、すごく不思議に思ったりしますね。日本はまだまだ金がある方だから、国際的に分担して責任を負う立場だから、そういう意味では国際的な支援とか国際協力に興味を持っていたほうがいいというのはある。でもいきなりそこから始めるのはどうかな。自分の住んでいる地域が疲弊していたら、それをどうやって盛り上げるかっていうことのほうがリアルだもん。どの地域だって問題を抱えているんだから。

――高度成長期も終わって、働く目的がお金だけではなくなってきたということですね。

今 社会起業家の目的は、社会問題を解決すること。もちろん儲けがないと続けられないけど、決して儲けることが目的ではない。そういうことをベタに言える人って、ジョン・レノンの『イマジン』の歌詞の「僕のことを夢想家と言うかもしれない」じゃないけど、マイノリティだと思われてる。でも、それを臆面もなく言えるのが社会起業家の凄いところ。彼らは今までの仕組みとは違うものを自ら作って、実際に社会問題を解決する方向に持って行く。例えば「みやじ豚」の宮治勇輔君もそうだけど、農家は今までは農協に任せておけば流通が成り立っていたんだけど、今はそれだけじゃ食べていけない。だから農家も自分たちで流通を自分で確保することを考えた。例えば自分のところで直営店を作って販売したりとかね。流通の仕組みを変えることによって、より自由度の高いビジネスモデルが生まれた。それによって実際に何がもたらされたかというと、「農家は面白い」というプロモーションと、日本の農業の持続可能性。そしてそのモデルは次の世代にも受け継ぐことになる。そういうふうに仕組みを変えて行くこと、いわゆるソーシャルイノベーション(社会変革)を起こすってことが社会起業なんですよ。

*1自分より不遇だったり、弱い立場の人間の持つ切実な苦しみを見過ごせないと感じられる感性のこと

(PROFILE)
今一生(こん・いっしょう)
フリーライター、編集者。1997年『日本一醜い親への手紙』3部作をCreate Media名議で企画・編集しベストセラーに。『完全家出マニュアル』で自ら造語した「プチ家出」は流行語となった。著書に『社会起業家に学べ!』(アスキー新書)『プライドワーク』(春秋社)など多数。
Twetterアカウント:conisshow
★今一生さんがプロデュースする「ニッポン社会起業家スタディツアー2010夏

(取材日 2010年7月6日 東京都虎ノ門)

 


 

(2010年8月25日 00:00)
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