8年目を迎えた「打ち水大作戦」の原点【日本水フォーラム】

日本水フォーラムの浅井重範氏と松村みどり氏
日本の都市地域で盛夏の風物詩となった「打ち水」。このムーヴメントは、03年のイベント、「大江戸打ち水大作戦」に端を発している。運動の中核を担う打ち水大作戦本部(NPO法人日本水フォーラム内)で話を聞いた。

 2010年も「打ち水の夏」が来た。8年目を迎えた「打ち水大作戦」は、二十四節気の大暑(7月23日)から処暑(8月23日)まで、日本各地で展開されている。
 1980年代以降、日本の気温は上昇の一途を辿ってきた。今年も、夏場の過ごしにくさは度を越しており、熱中症による独居老人の孤独死が社会問題になっている。暑い→エアコン全開→廃熱が暑さに拍車→さらにエアコン全開→の悪循環が果てしなく続く。
 
 今世紀初頭、当時国土交通省の研究機関であった土木研究所の研究員が、ある試算を行った。東京の約半分の面積に一斉に水を撒けば、気化熱で2度程度、気温が下がる...。「これは試してみる価値がある」と、興味をもった人々が集まり、03年に「大江戸打ち水大作戦」が実施された。当時はマスコミでも大きな話題となり、参加者の多くが「打ち水」の効果を実感。この成功を受け、翌年から全国で打ち水大作戦が行われるようになった。

 本部の統計によれば、参加者は毎年6百万人を超える「打ち水大作戦」。掌握していないイベントまで加えれば、さらに多くの人々が確実に関わっている。打ち水大作戦本部では海外へも打ち水を積極的に紹介し、スペインのサラゴサ万博(08)や韓国インチョン市での世界都市水フォーラム(09)等でも、現地の人たちと打ち水大作戦を実施した。
 
 運動がここまで浸透したのは、そのシンプルさが最大の原因だろう。ルールはたった一つ「風呂水や雨水など、『二次利用水』を使う」こと。しかし、ここで疑問が生じる。「ただそれだけで、どれほどの効果があるのか? 行政のお手軽な啓発イベントとして利用されているだけではないのか?」
 
 日本水フォーラムの浅井重範さんと松村みどりさんは、明快に答える。「作戦には二つの効果があります。まず第一段階として、涼しさを味わえる。そして必ず二次利用水をお使いいただくことで、参加者のみなさんに水の大切さを考えなおしてもらうきっかけになります」(浅井さん)

 日ごろ、我々は「水の大切さ」について思いを馳せることは少ない。それは日本が、古くから「水」に恵まれているからだ。調理過程で大量の水が必要な「蕎麦」など、この国でしか有り得ないメニューだといえる。
「しかし、水資源には限りがあります。日本人は、農業用水・工業用水などを別にして、先進国でも最高レベルの、一日一人あたり300リットルも水を使っています。水の確保には、ダムや貯水池が必要です。すると、その分、税金が投入されることになる。つまり、私たちの暮らしに、ダイレクトに関係しているんですね。水の使用量を減らし、効率よく使うことは、私たちの暮らしに必要不可欠なのです」(浅井さん)
 打ち水大作戦本部が毎年、無作為抽出で行っているアンケートの結果によれば、打ち水の実施者は全人口の10%程度、その半分以上が「環境意識を持った」「水を節約するようになった」と答えている。啓蒙活動は着実に成果を挙げているのだ(*1)。

 打ち水大作戦本部の浅井さんと松村さんに「打ち水のコツ」を伝授してもらおう。
「時間帯は、一般的には夕方がベストと言われています。日中たまった熱を早く逃がすことができます。撒く場所はアスファルトが一番効果的。芝生では、さほど気温が下がらないようです。また、近所で一斉に行えば、より涼しさを実感できます。」(松村さん)
 ご近所のコミュニケーション作りに「打ち水」を役立ててみてはいかがだろう。マンションの場合は、ベランダに水を撒くだけでもよいという。
 打ち水大作戦は正午に行われることが多いが、一瞬の清涼感を多くの参加者が実感できるというプラス面がある。また朝の打ち水は、日中にかけての気温上昇を和らげる。
「ぜひ、打ち水をする前と後で、気温を測って比べてください。2度は下がっているはずです。夏休み、小学生の自由研究(*2)にも、オススメです」(浅井さん)

(*1)「それでも、アンケートによれば、打ち水を行った人のおよそ半分は、水道水を使ったそうです」(浅井さん)。あくまでも風呂の残り湯などを使うよう、習慣づけていくことが今後の課題のようだ。洗面器や手桶で運ぶのが面倒なら、打ち水用に2リットルのペットボトルを常備しておくとよい。

(*2)打ち水大作戦本部では、この夏、小学生を対象としたECOスタディツアーを実施。ダム見学や川遊び、下水処理場見学など盛りだくさんの内容だ。8月10日まで参加者募集中。詳細はこちらへ。

(取材日 2010年7月14日 東京都茅場町)

(2010年8月 4日 00:00)
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