ビールを飲んで社会貢献できるってホント!?【ルーム・トゥ・リード】

直江直子氏とゲーリー・ブレママン氏夏、ビールの季節。旨いビールを飲みながらカンタンに社会貢献ができるという、酒飲みにはたまらないプログラム、それが「ビアーズ・フォー・ブックス」だ。立派なソーシャル・ドリンカーになる方法を教えよう。

 画期的な寄付調達プログラム「ビアーズ・フォー・ブックス(*1)」を思いついたのは東京在住のアメリカ人、ゲーリー・ブレママンさん。システムはいたってシンプルだ。「ビアーズ・フォー・ブックス」のイベントの際、ビール(これは好みの飲み物でも何でもいいのだが...)1杯をオーダーすると、そのうち100円が、途上国で出版される本一冊の制作費として寄付される(*2)。この100円は店側が負担するが、店にとっては普段よりも多くの集客が期待できるし、新規の顧客開拓というメリットがある(さらに店の従業員たちも楽しく働けて、仕事への誇りにもつながる)。参加して楽しく(旨いビールを飲める)、会場にとってもプラスとなり、そして何より途上国の子どもたちに本をプレゼントすることができるという「三方一両得」なイベントが「ビアーズ・フォー・ブックス」なのだ。収益の寄付先は、近年急成長を見せているNGO「ルーム・トゥ・リード」である。

 ゲーリーさんは、もともと「ルーム・トゥ・リード」にボランティアとして参加していた。効果的な資金調達方法を模索するうち「僕は本が好き、ビールが好き。この二つを結びつけたらどうなる?」と考え、そこからひらめいたアイディアが「ビアーズ・フォー・ブックス」だった。
 「ルーム・トゥ・リード」は、途上国の子どもたちに幅広く教育の機会を提供しようとする組織で、図書館や図書室の建設、女子教育支援や学校建設などを行っているが、その中の一つに「現地語での出版」がある。現地の作家や画家に、子ども向けの本の作成を依頼し、それを地元で印刷・製本、建設した学校や図書館に配布するというものだ。このオリジナル本の制作費が一冊あたりおよそ100円。即ち、「ビアーズ・フォー・ブックス」でビール一杯を飲んだときの寄付金額。一杯飲むごとに一冊の本を贈ることができるというわけで、実にわかりやすく明快かつ楽しい。

 「ルーム・トゥ・リード」を設立したのはアメリカ人のジョン・ウッドさん(*3)。マイクロソフトの豪州支社でマーケティング・ディレクターを務めていたジョンさんは、休暇で訪れたネパールの学校で、すし詰めの教室やほとんど本のない図書館に驚き、「ルーム・トゥ・リード」のアイディアを得た。団体の設立は2000年のこと。それからわずか10年のうちに「ルーム・トゥ・リード」は急成長を遂げ、社会起業家としてのジョンさんも、世界的な著名人となった。
 「ルーム・トゥ・リード」のユニークな点は、腕利きのビジネスマンだったジョンさんが、生き馬の目を抜く国際市場で成功を収めた手法を、非営利組織の運営に応用したこと。従来のお涙頂戴的な募金活動とは一線を画した「ルーム・トゥ・リード」のメソッドは、社会の第一線で活躍する人々の心をとらえた。東京チャプターは2007年に誕生し、現在およそ1000人のボランティアが登録されている。

 「ファンドレイジング(資金調達)のカルチャーを日本に広めたい」と、ルーム・トゥ・リード東京チャプターの直江智子共同代表は語る。実際、この「カルチャー」は少しずつ日本にも浸透しつつあり、いくつかの大企業の積極的な参加も見られる。
 古書や中古CD・DVD・ゲームなどの売買大手・ブックオフもその一つ。今年の8月も、去年に引き続き「ブックス・トゥ・ザ・ピープル」のキャンペーンを行う(*4)。買い取った品物の数量に応じて寄付を行うもので、去年はスリランカに図書館3館と図書室18室をオープンできた。「不要な本やCD、DVD、ゲームなどがあれば、8月中にブックオフにお売りいただければ幸いです」(直江さん)
 もちろん、ビールを飲んで貢献することもできる。「ビアーズ・フォー・ブックス」のサイトには近々の開催予定がアップされているので要チェック(*5)。ぜひ、喉を潤すと同時に、途上国の子どもたちを潤していただきたい。

(*1)正式名称は「Beers For Books」「キャッチフレーズは、ワン・ビアー、ワン・ブック。今年中には日本語のサイトもオープンさせる予定です」(ゲーリーさん)。この催し物の特徴は、1杯につき100円を寄付するという同意さえ得られれば、店側だけでなく、誰もが気軽に主催者になれること。「もちろんビールに限らない。好きな飲み物で開催してくれればいいんです。ワインなら『ボトルズ・フォー・ブックス』になる。音楽中心の催しなら『ビーツ・フォー・ブックス』とか」。目下のところ、ゲーリーさんの夢は、47都道府県で「ビアーズ・フォー・ブックス」を開催すること。公式サイトには日本地図が載っており、開催された都道府県は赤く塗りつぶしてある。空白地域在住の読者の皆さんは、ぜひ地元での開催をお考えいただきたい。ちなみに、こちらも英語だが、公式サイトには詳細な開催マニュアルが用意されている。
(*2)「ビアーズ・フォー・ブックス」が始まったのが09年2月。それから10年7月3日までの1年4ヶ月あまりで、70,217冊が寄付された。「今年中に10万冊達成予定です」(ゲーリーさん)
(*3)ジョン・ウッドさんの転身については、自身の著書「マイクロソフトでは出会えなかった天職」(武田ランダムハウスジャパン・1680円)に詳しい。
(*4)ブックオフでは、8月のキャンペーンの他にも、年間を通じたチャリティを行っている。これは、本の買取金額をルーム・トゥ・リードに寄付することを指定すると、査定金額に10%を上乗せした金額がルーム・トゥ・リードに寄付されるシステム。詳細はこちら
(*5)7月30日には六本木、ミッドタウン近くのニューヨークスタイル・レストラン「Fifty Seven」で19時から「ビアーズ・フォー・ブックス」のイベントが開催される。

(取材日 2010年6月21日 東京都)

(2010年7月12日 00:00)
From CANPAN NEWS
東北地方太平洋沖地震支援基金

CANPANプロジェクト

日本財団

CANPANレポート