太平洋を股にかけるウミガメな人々【エバー・ラスティング・ネイチャー】

アオウミガメの死がいからでてきたゴミ
人間の都合で絶滅寸前にまで追い込まれているウミガメ。横浜市のNPO法人「エバーラスティング・ネイチャー」では、地道な学術調査を積み重ねながら、ウミガメの保護・増殖の現実的な処方箋を模索し続けている。

 世田谷区立玉川小学校の玄関を入ってすぐの場所に、水槽が置かれ、2匹の子ガメが元気に泳いでいる。名づけて「子ガメ飼育体験学習プロジェクト」。飼育を通して、絶滅危惧種のアオウミガメを、子どもたちに直接肌で感じてもらうことが目的だ。「未来」「宇宙(そら)」と名づけられた小笠原からやって来た子ガメたちは、6月末には生まれ故郷に戻り、放流される予定となっている。
 このプロジェクトは、NPO法人エバーラスティング・ネイチャー(略称=ELNA、以下同)と、玉川小学校が共同で手がけているもの。ELNAは、小笠原海洋センターの運営を受託し、アオウミガメやザトウクジラの調査研究を行っている団体だ。
「ウミガメは、かつて熱帯や亜熱帯では入手しやすいタンパク源でしたが、乱獲のため激減してしまいました」(菅沼弘行会長)
 現在でも小笠原や沖縄ではウミガメ漁があり、他の地域でも少数ながら食用として利用しているところもある。

 ELNA設立のきっかけは、ワシントン条約にあった。べっ甲の消費国であった日本は、条約の締結後も適用を留保し、原料であるウミガメの一種、タイマイの輸入を続けてきたが、92年一杯で禁止されることになった。
 そこで、禁止を前に、駆け込み輸入が相次ぎ、凄まじい勢いでタイマイの乱獲が行われた。世界最大のべっ甲材輸出国であったインドネシアでは、およそ8割が減少。また、ほぼ100%の卵が食用となっており、放置すれば絶滅は必至の状況だったという。
 一刻も早くインドネシアのタイマイ繁殖状況や資源量を知り、保護に取りかかる必要があった。そこで現地に研究センターが設置され、その日本側窓口という形で、99年にスタートしたのがELNAである。
 02年にはNPO法人の認証を受け、フィールドでの活動もスタート。現在では、インドネシアのほか、前述の小笠原など日本国内でも幅広い調査・研究活動を展開している。
「インドネシアでは、かつての卵の盗掘者を監視員に雇っています(笑)」(菅沼会長)

 ELNAの常勤スタッフは、会長を含め5名。その態勢で、小笠原からインドネシアに及ぶフィールドをカバーするのは、並大抵のことではない。小笠原では、ボランティアたちが大きな役割を担っている。
「社会人も多いですね。それも圧倒的に女性。仕事辞めて、しばらくのんびり島で過ごしたい、っていう。クジラに大接近できるのも、魅力的なようですね」(菅沼会長)。
 ボランティアからは研修費として一日500円を徴収するが、コメと調味料は支給する。また漁師が新鮮な魚を持ってきてくれるので生活は十分成り立つ、という。
 小笠原では、ウミガメが食生活の中に溶け込んでいる。スーパーでカメ肉を売っているし、「居酒屋にはカメラーメンなんてのもありますよ」(田中真一事務局長)
 ボランティアの女性たちは「最初はカメ肉なんてイヤー、かわいそうって言うけど、結局みんな食べるね(笑)」(菅沼会長)

 小笠原に行かなくても、関東地方に住んでいれば、ELNAの活動に参加することは可能だ。神奈川、千葉、茨城の海岸でのウミガメのストランディング調査(死亡漂着したカメの解剖調査)にボランティアとして加わればよい。
「関東では年間150くらいの死体が流れ着きます。ほとんどは異臭を放ち、腐敗ガスで膨れていますが、解体して調べることで、ウミガメの生態を知ることができる。なぜウミガメが減少しているか、その原因を探ることもできる、重要な仕事です」(田中事務局長)
 事務局にはウミガメの体内から取り出された異物がストックされている。そのほとんどにプラスチック類、風船、釣り糸などが含まれる。空き缶が出てくることもあるという。これが太平洋の現実だ。
 死体は、ある日突然流れ着く。調査はまったなしだ。参加を希望される方は、ELNA事務局にお問い合わせいただきたい。
 
(取材日 2010年5月7日 神奈川県横浜市)

(2010年6月 1日 00:00)
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