「農家のこせがれ」よ、田園に帰れ!【農家のこせがれネットワーク】

農業の今を語る宮治勇輔氏
「農家のこせがれ」が燃えている。NPO「農家のこせがれネットワーク」は、六本木でレストランやマルシェ(青空市場)を展開、農業の魅力をアピール。また都会に暮らす「こせがれ」に向け、後継者となるよう促す。
 
 日本の農業は危機的状態にある、と言われるようになって久しい。この間、有機農業への関心も高まり、篤農家がマスコミに登場する機会も増えた。安全で安心な農産物も、求めればさほど苦労せず手に入れられるようになり、「危機」は遠ざかったのではないかと思うこともある。
 だが、こういう数字を突きつけられると、どう思うだろう?
「05年の調査によれば、日本の農家の平均年齢は64.2歳。5年経った今は、おそらく67歳くらいになっているのではないでしょうか。もちろん世界一高齢です。企業ならみんな定年。普通なら考えられない状況です」
 09年3月に誕生し、一周年を迎えたNPO法人「農家のこせがれネットワーク」代表理事CEOの宮治勇輔さんは、農業の危機はどんどん深刻さを増している、と強調する。
「バトンタッチができる間に、若手を育てておかないと...」
 
 日本の農業を滅ぼさないためにも、現在は都会で働いている農家の二世たちを、故郷へ戻していかなければならない。その母体組織として構想されたのが「農家のこせがれネットワーク」なのである。
 いつかは帰りたいという思いはあっても、実際に都会に出た『こせがれ』たちにとって情報はあまりにも少なく、「手本」となる先輩たちと巡り会うのも難しい。「こせがれネット」が目指すのは、そんな「帰農」のためのロールモデルを作ると共に、若い農業者たちのネットワークを作り出すことだ。
 地元へのUターンを決意しても、いきなり帰って修業を始めるより、都会で働きながら少しずつ知識を蓄え、ソフトランディングを目指すほうがいい。「こせがれネット」は、都会の中にあって、そんな「勉強」の場となる役割も担おうとしている。
「農業を『かっこいい、感動、稼げる』の3K産業にしていきたい」(宮治さん)
 
 「こせがれネット」の拠点となるのが、六本木のレストラン「六本木農園」だ。全国から極上の食材が集められ、生産者には販路が、都会生活者には新鮮な野菜をメインとする料理が提供される。生産者は自分たちの食材が喜ばれているのを実感できる。それは「こせがれ」たちの誇りとなり、農業へ向かう気持ちを支えていく。
 また「こせがれネット」では、農家を実家にもつ都会人の交流会を実施している。「実家で、のんびり暮らしたい若者は多いのですが、みな身近に相談相手がいない。交流会は、悩める『こせがれ』たちが気兼ねなくトークできる場になっています」(宮治さん)
 さらに今年度からは都内で毎月、誰もが参加できるバーベキューを開催。農家と「こせがれ」、一般生活者の出会いの場となっている。宮治さんの「こせがれネットには、農業に関心のある人すべてに参加してほしい」という理念が、ここに実現されている。
 
 NPOがスタートしたこの一年の間に、農業に取り組む決意をした「こせがれ」は二人。一人は茨城でイチゴを、もう一人は千葉で野菜を手がけている。また、新規就農者も一人誕生した。「こせがれネット」の取り組みは着実に前進し、組織や活動に対する認知度も上がってきている。
 宮治さん自身も、「こせがれ」の一人。大学を出て4年半会社勤めを経験した後、実家の養豚業に関わることになった。自ら「日本一六本木に通う農家」と言うとおり、NPOや渉外を中心に活動し、実務は父親と弟が担っている。名字を冠したブランドの「みやじ豚」は、旨い食材として人気を集めており、各地のレストランで引っ張りだこだ。
「農家のこせがれが『他人のメシ』を食うのは悪いことじゃない。生活者の視点をもつことができるし、人間関係も拡がる。その上で農業に帰っていくことに意味があるんです」(宮治さん)。

(取材日2010年4月22日 神奈川県 藤沢)
(2010年5月18日 00:00)
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