『聴き書き』が繋ぐ世代間コミュニケーション【昭和の記憶】

聞き書きを多くの人に広めたいと語る瀧澤さん

 昭和激動を生きた高齢者たちの貴重な証言に耳を傾け、文章にして未来に伝える「聴き書き」。NPO法人「昭和の記憶」は日本全国の高齢者たちを訪ね、その当時の心に残るエピソードをまとめ、ホームページや書籍などで紹介している。

「『聴き書き』と言っても、聞き取ったことを忠実に文字にまとめるのが主な目的ではありません。一番の目的は聞き手と話し手がコミュニケーションすること。接することが大事なのだと思います」

 代表の瀧澤尚子さんは大学生の頃にホームヘルパーの資格を取り、高齢者の介護に携わっていた。そこで出会った高齢者の感情が閉ざされたような表情を見て、彼女はショックを受ける。

「その方は家族と一緒に住まれているのですが、朝早く皆さんが出て行ってしまうため、お昼でも雨戸が締めっぱなしで真っ暗。そして誰ともお話してないからか、心を閉ざしてしまっているようでした。そのときから、介護以外に高齢者に心の充実を与えられる方法はないかと考えていたんです」(瀧澤さん)

 そんなときに同団体の存在を知った瀧澤さんは、2006年から「聴き書き」の活動に参加するようになった。

 介護施設をはじめ、家庭や自治体、企業など、高齢者が集まるあらゆる場所へ足を運び「聴き書き」を実施する瀧澤さん。今では代表を務めるようになった彼女をサポートする会員は、現在100名以上。その多くは大学生などの若者だ。

「参加してくれた理由を彼らに聞くと、祖父母世代とほとんど接する機会がないからということでした。核家族が基本ですから仕方ありませんよね。自分の親と同じ世代と接するのは近すぎて息苦しい。でも祖父母世代だと人生の大先輩として凄く安心するようです。今とは全く違う時代の話を聴くことで、自分が今は生きている社会がその方たちが担ってきたんだというのを実感して尊敬できるんです」(瀧澤さん)

 ある女性の高齢者が若い頃、見合い相手の家に招かれた。家に着くなり風呂を勧められ、相手の母親と一緒に入浴することとなった。不思議に思った彼女は、帰宅後母親にそのことを話すと、当たり前のようにその理由を教えてくれた。出産するのに適した体かどうかのチェックされていたのである。

「見合いどころか、親が結婚相手を決めることもあった時代なのでしょうが、驚きますよね(笑)。でもそんな制約の中で暮らさざるを得なかった方々の"強さ"も凄く感じました」(瀧澤さん)

 同団体では「敬老の日を『聴き書きの日』にキャンペーン」と題し、2010年の敬老の日までに、のべ1万人のエピソードを集め、全国1000ヶ所で「聴き書き」イベントの実施を目指している。

「『聴き書き』は家族の単位できる活動です。『聴き書き』イベントも敬老の日だけでなく、随時開催しています。戦争のお話を聞いても、おじいちゃんとおばあちゃんの結婚の話を聞いてもいい。ちょっと興味を持った方は、ぜひに参加してください」(瀧澤さん)

(取材日2010年1月18日 東京都九段下)

(2010年4月20日 00:00)
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