豊かな海を復活させ、みんなの笑顔を取り戻したい【庄内浜を考える会】

庄内浜を考える会豊かな漁場が突然失われる「磯焼け」。日本の沿岸に広がりつつあるこの現象を食い止めようと、各地で関係者の懸命な努力が続く。山形、庄内地方でも、若きダイバーたちが「アマモ移植」に意欲的に取り組んでいる。

 多くの魚介類の「ゆりかご」となっていた海草林が突然死滅し、生物が姿を消してしまう不気味な現象「磯焼け」が、日本各地に広がっている。地球温暖化、あるいは海水中のCO2増加などが原因と推定されるが、詳しいメカニズムはわかっていない。漁業関係者らは危機感を抱き、各地で海草の復活に向けた取り組みが行われているが、なかなか成果が上がらないのが現状だ。
 山形県・酒田市では、地元のダイバーが中心となったNPO法人「庄内浜を考える会」が、08年からアマモの移植や生育調査を行っている。港内の浚渫により、失われてしまうアマモを、庄内浜の各地に移し、藻場を広げていこうとする取り組みだ。09年度は、セブン-イレブンみどりの基金環境市民活動助成や、コンサベーション・アライアンス・ジャパンの自然環境保護基金プログラムに選ばれた。事務局長の齋藤秀勝氏は「海がきれいになることで、みんなが喜んでくれればいいですね」と語る。

 「庄内浜を考える会」の母体となっているのは、ダイビングショップである(有)マリンサービス山形。ダイバーであり、水中写真家としても知られる斎藤春雄氏が1985年に設立した。NPO法人「庄内浜を考える会」は春雄氏が理事長であり、事務局長の秀勝氏は春雄氏の長男。「10歳の時、耳抜きもできないまま、いきなり潜らされました」という秀勝氏だが、現在では春雄氏と肩を並べるダイバー、そしてカメラマンとなっている。
「酒田市の小岩川港は、高い波が入ってこないので、アマモが生えやすく、流されない。ただ、船のスクリューに絡んでしまうので、浚渫する必要があるんです。だったら、このせっかく生えたアマモを、磯焼けで海草がなくなった地域に移してみたらどうか、と考えたわけです」
 アマモは、地域の特産であるコウイカの産卵場となる。アマモの保護は、希少になりつつある漁業資源の確保にもつながるのだ。

 「庄内浜を考える会」の活動は、ほぼ月に一回のペースで行われる。春、港内でスコップを使い2~300株のアマモを採取し、これを適当だと思われる場所に移植。あとは増減を観察していく作業となる。
 「まだまだ試験レベルです。とりあえず植えてみて、しばらくしてもう一度潜って、どのくらい根付いているかを見る。なくなっていたり、枯れていたりしたら、その原因を考えてみる。試行錯誤が続いています。アマモ移植は、日本海側では、波が強いこともあって、成功した例があまりないんですね」
 アマモの定着を阻むのは、やはり強い波の力だ。考える会の初年度の移植事業でも、成功したのは一ヶ所だけだったという。
 アマモ林はコウイカの産卵場所となるだけでなく、メバルの幼魚などが寄り付いてくれば、餌場の確保にもつながる。そんな食物連鎖を復活させていきたいという、壮大な取り組みは、まだスタートしたばかりだ。

 今後、「庄内浜を考える会」では、アマモの移植事業に加え、ムラサキガイによる港湾の浄化も考えている。ムール貝としておなじみの食材でもあるムラサキガイは、有機物やプランクトンを捕食し、水質を浄化する力に優れているのだ。
 かつて、日本の沿岸部のどこにも見られたような、海藻類が繁茂し、魚介類を育む豊かな海の風景をなんとか復活させたい、と斎藤秀勝事務局長は語る。
「地道に続けていくしかない、と思っています。一発、ドーンと、派手にやっても、続かなければ何にもなりませんからね」
 事務局長が一番ワクワクするのは「これから海に潜るぞ、というとき」。潜ってみるまで、海の中はどうなっているかわからない。遠足に行く前の、あの期待に満ちたような感じがたまらない...と、楽しそうに語ってくれた。

(取材日2009年9月15日 山形県庄内市)
(2010年4月11日 00:00)
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