自殺防止は「人の命を救う戦い」だと思うんです【蜘蛛の糸】

蜘蛛の糸代表佐藤理事長14年連続で自殺率日本一の秋田県で、自殺を防ごうとするギリギリの努力が続いている。自殺防止を目的とするNPO法人「蜘蛛の糸」の佐藤久男理事長は、自殺防止の活動を「人の命を救う戦い」と断言する。

 なぜ秋田の自殺率が高いのか。
 世界的な経済状況の悪化、真面目な県民性、日照時間の短さ、少子高齢化と過疎...こうしたさまざまな要因が複雑に絡み合っていることは間違いない。
 県民所得で比べてみると、秋田は東京のおよそ半分から3分の1。地方特有の「貧しさ」も背景にある。
 この秋田で、自殺防止活動の中心となっているのがNPO法人「蜘蛛の糸」だ。佐藤久男理事長は、自ら創業した会社を倒産させ、自殺を考えたことがある「自殺の当事者」。同じような境遇にあった複数の友人を自殺で失っている。
「自殺防止は人の命を救うための戦いです。正直言って、難しい。一人の人間が、一生かかって、一人を救えれば、それでいいというくらいのものだと思っています」(佐藤理事長)

 2009年の自殺者は、32,753人(警察庁の統計による)。12年連続で3万人を越えた。「人間を死に追いやる社会背景が存在する。これは大きな社会的問題だ」と、佐藤理事長は語る。
 自殺大国・日本。しかし秋田ではこの7年で一年間の自殺者は100名も減少している。「蜘蛛の糸」を中心に、秋田県内の官・民・学が連携し、自殺防止に取り組んでいる結果が少しずつ現れている。
「なんとか秋田の自殺者を減らしたい。中でも、自営業者、中小企業の経営者といった、かつての私と似た立場の人たちを」(佐藤理事長)
 長い間、地域社会の活性化に貢献してきた功労者である自営業者たちを、むざむざと殺してなるものか、これが佐藤理事長の願いなのだ。
 「蜘蛛の糸」が活動を始めた02年、自営業者の自殺者は89人。これが09年には56人にまで減った。

 自殺者のデータを見ていて気づくのは、圧倒的に男性が多いこと。ほぼ7対3の割合で男性の自殺者が多く、さらに自営業者に限ってみれば女性はほとんどいない、と佐藤理事長は語る。
「やはりプライドとか、名誉とか...男性の方がこだわりが強いんですね。そして挫折したときに弱い。何かカチン! って、音を立てて壊れてしまうようなところがありますね」
 自営業者、経営者は概してプライドが高いもの。会社が窮地に追い込まれても、自分ですべてを抱え込んでしまいがちになる。早いうちに専門家のアドバイスを受ければ、立ち直れることも多いのに、相談を嫌うばかりに、再生のチャンスを失う経営者が多いのだ。佐藤理事長いわく「相談力が弱い」。
「奥さんにも打ち明けられるといいんですけど、お金のことはわからないだろうし、心配かけたくないし。私も女房には相談しなかったけど(笑)。今では反省を込めて、話をしなさい、と」

 自ら会社を起こし、全盛期は年商十五億の企業トップだった佐藤理事長だけに、経営者たちへのアドバイスは具体的だ。
「自分がやってきたことだから、経営者の悩みは手に取るようにわかります。財務諸表を見せてもらえば、本人は倒産すると思っていても、助かるケースはけっこうあるんです」
 蜘蛛の糸は、来年でNPOとしての活動十年目に入る。
「NPOのメリットは、責任感が出ること。また、仲間が集まってくる可能性も強くなります。また、結果論ですが、『自殺対策基本法』の制定に深く関わることもできました」
 相談の電話は、秋田のみならず、日本全国からひっきりなしにかかってくるが、蜘蛛の糸のスタッフは理事長を含め3名。
「もう少し人を増やしたいのですが、財政的に厳しいですね。助成金ですか? 期待してないけど、もしもらえたら、その金額の3倍ぐらいはがんばりますよ(笑)」

(取材日2009年9月11日 秋田県秋田市)
(2010年4月10日 00:00)
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